「千寿の森」という言葉を聞いてから先程の前のめり感か薄らぐスコップ。
ルビッチ「千寿の森を知ってるんですか?」
ルビッチの声で我に返るスコップ。
少しの間考えた後、語り始める。
スコップ「知ってるってほどのもんじゃないが噂を聞いたってくらいのレベルかなぁ。昔ね、まだブルーノがいた頃、よく酒場でバッタリブルーノに会ったんだよ。」
ルビッチ「父ちゃんに?」
スコップ「ああ。そこで海の向こうの話やそれこそ空の上の星の話もよく聞かせてくれたんだ。」
ルビッチ「星の話を・・・」
スコップ「そんな話の中で「千寿の森」の話が印象的でね・・・」
ルビッチ「どんな所が?」
スコップ「うん、なんでもその昔、それこそバミューダ王国と千寿の森は同じ領土だったって話さ。」
ルビッチ「そういえば、ルイザさんも子供の頃はよく千寿の森に行っていたって・・・」
スコップ「だろ?元々一つの領土、(都市)←?として大いに栄えたって話さ。だがある時からその一つだったものが・・・」
途中まで話すなり、両手の指をくっつけて一つの円を作り、その後両手を左右に離し真っ二つをイメージさせる。
スコップ「断絶されたんだ。」
ルビッチ「断絶?」
スコップ「真っ二つに別れたって事さ。」
ルビッチ「!・・・ルイザさんもある時から千寿の森へ行く事を禁じられたって・・・」
スコップ「!やっぱりか・・・酒場の話が現実味をおびてきたなぁ。」
ルビッチ「お父様はあんまり千寿の森のことを話してくれなかったって・・・」
スコップ「そりゃそうさ。子供に聞かせた所で理解なんかできっこないし、上レベルの汚い話を子供には知られたくないからねぇ。」
ルビッチ「いったい何があったんですか?」
千寿の森数十年前昼(回想)
千寿の森にはバミューダ王国から一直線に伸びる光がキラキラと差し込んでいる。
辺り一面に綺麗な花が咲き、木には美味しそうな果実がなっている。
沢山の小人がバミューダの人間と楽しげに会話をしている。
鳥や虫がその上を飛び交い穏やかな風が流れている。
〇〇草原には千寿の実が咲きほこり、光に照らされた実が七色に輝く。
千寿の実にカメラが寄り、七色に輝く実がクローズアップされる。
スコップ(声)「なんでも千寿の森には〇〇って実が自生していてその実がとんでもない力を持っているというんだ・・・」
スコップの作業場(夜)同行拒否
ルビッチ「とんでもない力・・・。」
スコップ「ああ。噂レベルの話だがね、その実・・・食べると願いが叶うというまるで信じがたい噂があって・・・ブルーノもこの千寿の実にひどく興味を持っててね、酔ってはよく話してたんだよ。大切な人を守る為には・・・とかなんとか、なんの事だかよく分からなかったけど、ブルーノも千寿の森に関心を持っていた事は確かだね。」
ルビッチ「父ちゃんは何をお願いしたかったんだろう・・・」
スコップ「・・・」
ルビッチの顔を見るが、その質問には答えないスコップ。
スコップ「とにかく、その実が原因でゆくゆくの領土断絶にまて発展するってわけさ。」
ルビッチ「どうして?だって何でも願いが叶う実なら素晴らしい未来しか待ってないんじゃあ!?・・・」
スコップ「そこが鍵なんだよ。素晴らしいってとこがさ。」
ルビッチ「?」
スコップ「人の欲って分かるかい?」
ルビッチ「・・・はい、なんとなく。」
スコップ「この「欲」ってモノは決して目には見えないモノなんだが恐ろしいくらいの破壊力を持っているんだ。」
ルビッチ「・・・」
スコップ「一度それに取り憑かれるともうどうしようもなくなってしまうのさ。歯止めが効かない。」
ルビッチ「・・・」
スコップ「それが一つだったらまだしも、十、百、千・・・とあったらどうだ?欲にまみれた世界は破壊、衰退の一途をたどるしかないんだ。」
ルビッチ「なんだかよく分からないけど、恐ろしい未来が来るって事ですね。」
スコップ「未来・・・だね。」
ルビッチ「でもそんなに仲の良い人たちが欲なんかでいがみ合うものなんでしょうか?」
スコップ「欲ってもんはいとも簡単に人の善悪を変えちまうモノなのさ。」
ルビッチ「・・・」
スコップ「その奇跡の実を巡って一つの領土が割れるくらいの争いがあったって話が千寿の森とバミューダ間でまことしやかに囁かれているってわけさ。」
ルビッチ「そんな事があったんですね。」
スコップ「事実かどうかはその地に古くから住む者に聞かなきゃ分からないけれどもね。」
話すなり眉毛を上げておどけた表情を見せるスコップ。
スコップ「その千寿の森への出発はいつを予定してるんだい?」
再び体を揺らし始めるスコップ。
その様子を見たルビッチが口ごもる。
少しの間を置いた後、ルビッチがゆっくりと話し出す。
ルビッチ「実は・・・まだお伝えしていない事があるんです。」
スコップ「なんだい、改まって。」
ルビッチ「・・・実はルイザさんのお嬢さんが千寿の森に行ったと確信した日に、彼女の髪飾りを見つけた日に、まだ千寿の森から戻って来ていない人が一人いるんです。」
スコップ「ど、どうゆう事だ?」
ルビッチ「3人での捜索の中で2人は戻ってきたのだけれど、まだ一人千寿の森から戻ってないって・・・戻ってきたというか、逃げ帰ってきたと言った方が正しいのかもしれません。」
スコップ「・・・何があったんだ?」
ルビッチ「はい・・・実は千寿の森で大蛇に遭遇したと。」
スコップ「!!!大蛇!?」
両手を広げて後退りするスコップ。
顔が青ざめている。
ルビッチ「大丈夫ですか?」
スコップ「とにかくだ!落ち着け!とにかく、まず一旦考えよう。大蛇はまずい。まずいというか、危険すぎる!とにかく落ち着くんだ、ルビッチ。」
ルビッチ「はい、落ち着いています。」
スコップ「うん、よかった。」
違った意味で体を左右に揺らし始めるスコップ。
そして何かを思い出したかのようにピタッと体を止める。
スコップ「あ!まずい・・・キッズたちに教える穴掘り教室がある事をすっかり忘れてた・・・」
ルビッチ「・・・」
スコップ「みんな楽しみにしてるからそっちも外せないぞぉ・・・」
ルビッチ「・・・」
スコップ「心配するなルビッチ、確か千寿の森に〇〇って仙人みたいなヤツがいるからそいつにお願いしたらいい。我がスコップ様が責任を持って千寿の森まで連れて行く。そこからは土地勘のある者が同行した方がなにかと事はスムーズに運ぶものよ。」
ルビッチ「・・・はい。」
スコップ「とにかく落ち着けルビッチ。」
体の揺れが激しくなるスコップ。
ルビッチ「はい、落ち着いています。」